【PROFILE】
笑福亭鶴瓶
1951年生まれ、大阪府出身。72年に六代目笑福亭松鶴に入門し、以後37年にわたり芸能界の第一線で活躍。主な映画出演作は、『母べえ』(07)、『私は貝になりたい』(08)など。『おとうと』(10)が公開待機中。
【PROFILE】
西川美和
1974年生まれ、広島県出身。是枝裕和監督の『ワンダフルライフ』(99)に参加し、映画の世界へ。02年『蛇とイチゴ』で監督デビュー。『ゆれる』(06)がカンヌ国際映画祭他、多くの映画祭で大絶賛を受けた。
6月5日には、「STVラジオ【鶴瓶噺】ディア・ドクター ヴァージョン IN 札幌」と名付けられたトークイベントが開催されました。北海道には7〜8年ぶり、会場となったSTVホールには実に25年ぶりに来たという鶴瓶師匠。共演者とのエピソードや撮影の裏話に、会場は大爆笑でした。
(c)2009「Dear Doctor」製作委員会
映画『ディア・ドクター』は、札幌シネマフロンティア、シアターキノで公開中
山あいの小さな村で、1人の医師が突然謎の失踪を遂げたところからスタートする映画『ディア・ドクター』。白と黒には塗り分けられないグレーな部分が、ときにユーモラスに、ときにシリアスに描かれています。監督は『ゆれる』で世界中を震撼させた西川美和監督、そして主演は"日本一顔を知られた男"こと笑福亭鶴瓶さん。来札した2人を直撃、極上の人間ドラマの魅力を伺ってきました。
―まずはモントリオール世界映画祭・ワールドコンペティション部門(2009年8月27日〜9月7日開催)への出品決定、おめでとうございます。率直な感想から聞かせてください。
西川(以下、西):自分が映画を作っている目的のひとつに、行ったことのない国の人々にも映画を広めていきたいというのがあるんです。私も色んな国の映画に育ててもらったので、少しでもお返しできるといいなって。日本の文化を知らなくても、日本の知り合いが1人もいなくても、世界中の人々に通じるような語り口をいつも探ってる。そういう意味では、モントリオールのような大きな映画祭で紹介して頂いて、それが継起になって広がっていくことの期待が高まっています。
鶴瓶(以下、鶴):冗談で「カンヌに行きます!」とか言ってたんですけど、まさかホントに世界に行けるとは。色んな人に聞いたら、そういうのに選ばれるのってものすごい大変なことなんですって。だから、西川美和の船に乗っかってよかったなあって思いますねえ。そうじゃないと絶対にこんなんありえないですから。ホンマに嬉しいです。カナダに行けるって嫁も喜んでます。もう服買ってましたし。
西:早いですね(笑)。
―撮影中、大変だったこと、印象に残っていることはありますか?
西:毎日毎日、日替わりでご高齢の俳優さんがいらっしゃったんです。夏場のすごい暑い時期だったので、とにかくみなさんの体調管理に気をつかいましたね。予期せぬセリフ忘れとかはあったんですが、みなさん、ものすごい情熱を持っていて、とても活き活きしたシーンが撮れたと思うんです。そこに(鶴瓶)師匠が入って、ダークなシーンの高揚感だとか、ぐっちゃぐちゃなカオスの状況というものを、非常にコミカルに演じてくださったし、みんなを引っ張ってもくださったので、楽しく撮影することができましたね。
鶴:おじいさんが息を吹き返すシーンが冒頭にあるんですが、その撮影の前日、(共演の)瑛太と一緒に朝まで呑んでたんです。でもご高齢の方がまだ仕事してはるのに、撮影終わったからって先に帰るのがイヤだったんで1日中現場にいたんですけど、...ものすごい具合悪いの、二日酔いで(笑)。申し訳ないけど、合間合間で寝たりして。撮影があるのに朝まで呑むなんてって思われるかもしれんけど、それは瑛太と仲良くならないかんと思ったからなんですよ。だから2人がもめるシーンも、とってもいいシーンに仕上がったんです。愛情も出てきますし。まあ寝たらあかんけど、とにかく呑みに行った次の日の撮影が1番印象に残ってますねえ。
西:その日のシーンのために、医療監修の先生と気道確保の練習とかやりましたよね。
鶴:そうそう、やりました。
西:随分、忘れられてましたけど(笑)。
鶴:でもそれは、瑛太と仲ようなるためですから(笑)。
―撮影が行われていたのは、ちょうど1年前。いま改めて気付いたことはありますか?
西:実は私、笑福亭鶴瓶という人間が、主人公の伊野治という人間と、そんなにパーソナリティが近いと思わないでキャスティングしたんですよ。もちろんダブるところはあるし、それを理解してくれるんだろうとは思っていたんですけど。だけど現場作りの在り方を見て、あ、近いところがあった!って感じたんです。もうね、断らないんですよ、サインも写真も。すごいサービス精神で。でもそれは、撮影を円滑に進めるための戦略なのかなって思うところもあって。で、こうして1年経って、一緒にキャンペーンを回らせてもらって気付いたんですが、師匠にとってはそれが普通なんですね。相変わらずのサービス精神(笑)。どうやらお父さんの代から人を喜ばせたくなる遺伝子があるらしくて。一方、伊野という男も、善人とか悪人とかの括りじゃなくて、とにかく目の前にした要求に応えてしまう人間なんです。とにかく本能的に手を出してしまう人。だから師匠と伊野は、本質的にすごい近かったんだなって、改めて気付きました。ナイスキャスティングだったと、自分を褒めたいです(笑)。
鶴:こんな素敵なことをおっしゃって頂いてるんですけど、こんな人間ですから意味なくやってたんです。サインなんかね、全然大変なことじゃないですから。笑福亭鶴瓶としてはじめてサインをしたとき、めちゃくちゃ嬉しかったんですよ。それが今になってイヤになるっていう方がおかしい。もちろん周りの人に迷惑をかけるのはあかんけど。だからサインをしない有名人を見ると、なんで拒絶してんねんって不思議になりますね。みんなね、いつまでもワクワクしてくれませんから。それも楽しむってことですよ。僕へのワクワクがいつまで通じるんだろうって。
西:ロケ場所の村人たちも、師匠に慣れてましたね。
鶴:一緒に話してても、「ちょっと用事あるんで」って帰られますからね(笑)。
―映画の中の伊野治は、満月みたいに輝いて見えました。お2人が伊野先生をひと言で表すとしたら、どんな言葉を選びますか?
西:闇に浮かぶ「螢」のような男だと思います。明るいんだけど、小さい光で。
鶴:「月」ですね。僕の落語の中で「満は欠ける」という言葉があるんですよ。山は登るけど必ず下りる、月は丸くなるけど必ず欠ける、といった風に。長いことおると満ちてくるけど、いつかは欠けるんです。だから伊野は「月」。どうですか、監督?
西:私も「月」って言えばよかった(笑)。
鶴:なんの負けん気やねん(笑)。
映画『ディア・ドクター』は、札幌シネマフロンティア、シアターキノで公開中
【STORY】
山あいの小さな村から、伊野治(笑福亭鶴瓶)という1人の医師が失踪した。村の人から"神さま仏さま"よりも頼りにされていた彼に、一体何があったのか...? 遡ること2ヵ月前、研修医・相馬(瑛太)がこの村に赴任してくる。伊野の働きぶりに共感を覚え、信頼をよせる相馬だったが、伊野にはある秘密があった。ずっと言えずにいた、ひとつの嘘が...。
監督:西川美和
出演:笑福亭鶴瓶、瑛太、余貴美子、井川遥、松重豊、岩松了、笹野高史、中村勘三郎、香川照之、八千草薫 他
ディア・ドクター official web site >>> http://www.deardoctor.jp
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